ピティナ音楽研究所

松川亜矢氏が日本音楽教育学会第9回学会賞に選出

松川亜矢氏が日本音楽教育学会第9回学会賞に選出
プロティアン・キャリア形成過程の研究で
松川亜矢氏
松川亜矢氏

ピティナ音楽研究所 協力研究員(ピティナ研究会員)の松川亜矢氏が、日本音楽教育学会 第9回学会賞に選出されました。授賞論文は、「ある音楽大学卒業生のプロティアン・キャリア形成過程―ライフストーリー法による事例研究―」(『音楽教育学』第53巻第2号掲載)です。

松川氏に、現在のテーマを研究しようと思った理由、授賞論文について、ピティナ会員へのメッセージなどを語っていただきました。

簡単な自己紹介をお願いします。
私は現役学生時代、教育学部音楽科で声楽を専攻しながら音楽教育学を勉強していました。修士課程修了後、学校教育現場で講師をしたり、舞台活動をしたりと慌ただしく過ごすうちに、研究したいという思いがつのって、大学教員になることを目指すようになりました。現在、大学教員になって12年が経ちます。声楽家として舞台活動も続けています。音楽界の現代的で多様な課題の解決に少しでも寄与できるよう、研鑽を続けたいと考えています。
現在の研究テーマと、そのテーマを研究しようと思った理由を教えてください。
現在、音楽家のキャリア形成と、音楽大学での学びについて主に研究しています。私は上述のように、音楽教育学の研究と、声楽家としての舞台活動の二足の草鞋を履いています。舞台活動をするなかで、多くの音楽家や音楽大学卒業生の方々と知り合うことができ、そのキャリアの多様さに惹かれるとともに、音楽大学という場の捉え方に共通点があることを興味深く思いました。私自身が音楽活動をしていながら音楽大学出身ではないからこそ、こうしたことを面白く思ったのかもしれません。音楽教育学の学術研究を紐解いてみると、音楽家のキャリアや音楽大学の学びについてはあまり研究されておらず、これはぜひ深く知りたい、自分で研究しようと思ったのが研究を始めるきっかけです。
授賞論文について教えてください。
この度、賞をいただいた論文は、「プロティアン・キャリア」と呼ばれる現代的な音楽家キャリアの実践者に焦点を当てて、インタビュー調査で得られた語りからそのキャリアの実態を分析したものです。
掲載誌である『音楽教育学』は日本音楽教育学会の学会誌で、音楽教育ないし音楽科教育、幼児の音楽表現などについて、毎号、高水準の議論が行われています。しかし音楽家のキャリアや音楽大学における専門教育については、本学会でも研究成果は多くありません。こうした現状もあって、拙稿が評価していただけたのだろうと思っています。
プロティアン・キャリアとはなんですか?
「プロティアン・キャリア」とは、一つの専門技術や職能に縛られず、状況に応じて柔軟に活動の幅を広げていく働き方です。音楽家の場合、従来の「演奏家」という枠を超えて、演奏・教育・企画・編曲など多様な音楽関係の仕事を組み合わせながらキャリアを築いていく生き方を指します。拙稿では、このような多面的な活動を展開する音楽家に着目し、そのキャリア形成過程と音楽大学での学びの意味づけを明らかにすることを試みました。
音楽家の方々に向けてのメッセージをお願いします。
これまで多くのかたにご協力いただいてインタビュー調査を進めて参りましたが、音楽を学ぶ人々のキャリア形成やキャリアへの考え方は本当に多様で、とても魅力的です。また、学術的に音楽家キャリアの事例研究はまだまだ蓄積に乏しい状態です。もし調査に協力してもよい、とお考えのかたがいらっしゃれば、ぜひご連絡いただけたら嬉しいです。
研究調査ご協力に関するお問い合わせ
a-matsukawa★nua.ac.jp(★をアットマークに替えてメールをお送りください)
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