ピティナ音楽研究所

ピティナ音楽研究所 2025年度研究報告会レポート

発足4年目を迎えたピティナ音楽研究所(PRIM)は、2026年3月22日(日)に東音ホールで2025年度研究報告会を開催しました。音楽学・音楽教育学・社会学・情報学と広い分野にわたる発表が行われ、5名の所属研究員がそれぞれの研究内容・進捗を報告しました。オンラインも含め多くの参加者を集め、活発な質疑応答が交わされる充実した報告会となりました。

研究報告会 レポート

報告会は、専務理事による研究所の位置づけと体制についての説明と研究所長による研究所の概況報告・紀要発行の告知から始まり、続いて福田氏による専門研究員としての報告、その後に各研究員が成果の報告を行いました。

福田成康researchmap
専門研究員としての活動実績と今後の展望 ~ピティナ音楽研究所のプレゼンス向上を目指して~
福田専務理事は、専務理事としての報告と専門研究員としての報告を分けて行いました。専務理事としての発表の中では、当研究所の沿革と位置づけ、目標とすること、予算などについて概況を報告しました。専門研究員としての活動報告の中では、情報処理学会やデジタルアーカイブ学会の研究大会における発表内容、執筆中の論文等について発表しました。
当日の資料(専務理事としての報告) 当日の資料(専門研究員としての報告)

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中村栄太researchmap
ピアノおよび吹奏楽の練習支援のための自動採譜に関する研究
ピアノと吹奏楽の練習支援を目的とした自動採譜の精度向上に関する研究を発表しました。ピアノでは、多様な録音環境(家庭のスマホ録音など)でも精度を上げるため、自己学習モデルを適応させる手法を検証しており、採譜誤りの傾向に基づく自動修正についての精度向上が見られると報告しました。吹奏楽では、チューナーマイクで個別の楽器の振動を記録し、合奏時の発音時刻や音高等のズレを定量的に分析するシステムを構築し、客観的で合理的な練習支援を目指しています。
当日の資料

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松川亜矢researchmap
音楽大学の機能:卒業後キャリアをめぐるバウンダリーに着目して
松川氏は、音楽の高等教育機関(音楽大学)が日本で教育的、社会的にどのような機能をもつか、をテーマとして研究しています。今回は、音楽大学の卒業後キャリアをめぐる「シンボリック・バウンダリー」について社会学的観点から発表しました。先行研究において、演奏家を上位、教育者を下位とみなすような序列意識が音楽家の中に存在することが指摘されています。松川氏はこの意識の形成過程を歴史資料をもとに検討し、日清戦争前に東京音楽学校が東京高等師範学校の附属校となり「実務的な機関」とみなされたこと、また、日清戦争後に東京音楽学校が再独立し、専門化が進んだこと、から表面化してきた歴史的な構造と捉えられるのではないか、と考察しました。
当日の資料

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菅沼起一researchmap
『即興』を現代の教育と実践に応用すること
菅沼氏は西洋音楽における歴史的即興演奏を専門に研究しています。当研究所のプロジェクトとしては、チェルニーの記した即興演奏の手引書(Op. 200)の翻訳を進め、Webページにて連載しています。今年度この翻訳が完了したため(※)、菅沼氏自身による知見も織り込んだ書籍化を目指しています。また昨年12月には、ピアニスト・ピティナ副会長の黒田亜樹氏とともに即興演奏に関する参加型ワークショップ・セミナーを開催し、教育現場における研究成果の応用を試みました。
※Webページ連載記事はあと数回更新予定です。
当日の資料

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上田泰史researchmap
ジョセフ・ヅィメルマン(1785-1853)についてのモノグラフィ出版準備進捗状況とパリ音楽院定期試験データベースの補完、及びその他の調査活動について
19世紀前半のパリ音楽院ピアノ教授であるジョゼフ・ヅィメルマンに関する書籍の出版準備状況を報告しました。ヅィメルマンはパリ音楽院教授として教育にあたったほか、著名な作曲家や評論家、演奏家などのエリートを招いて自宅サロンで演奏会シリーズを主宰し、ピアニストたちをデビューさせ、独自の芸術ネットワークを築きました。
また、ピティナ音楽院Webページ上で公開している「パリ国立音楽院ピアノ科 定期試験曲データベース」について、ピアノ科上級クラスの定例試験に関するデータを追加して拡充しました。たとえば、ドビュッシーなどの著名な作曲家がピアノ科学生としてどのような曲を演奏したかをすぐに検索できます。
当日の資料

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質疑応答・閉会

各発表後には、会場参加者およびZoom参加者からの質問に対して、発表者がそれぞれ回答する質疑応答の時間が設けられました。活発な意見交換が行われ、研究内容についてさらに深い理解を得る機会となりました。

すべての発表終了後、研究所所長より閉会の挨拶があり、盛況のうちに2025年度研究成果発表会は幕を閉じました。

※来年度の研究計画や今後の研究所の活動については、随時ピティナ音楽研究所のウェブサイトやSNS等でお知らせいたします。今後ともピティナ音楽研究所の活動にご注目ください。

ピティナ音楽研究所について

2022年4月に発足したピティナ音楽研究所(PRIM)は、上級研究員1名、研究員1名、協力研究員2名、専門研究員1名の計5名の研究員が所属し、音楽と音楽教育に関わる様々なテーマについて研究を行っています。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)定款の第42条を設立の根拠として、同協会の本部事務局、専門委員会とならぶ機関として設置されています。

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